A 親権者の決定
一般的に親権といわれているものは、下記の2つの権利・義務の総称です。
よって、親権者とは別に監護者を決めると、実際親権者と呼ばれているものの権利・義務は、財産管理権のみになります。
1、身上監護権
(子供の身の回りの世話や教育、しつけを行う権利)
例 子の住居の決定権
子に対する懲戒権
子の職業の許可(労働契約は含まない)
2、財産管理権
(子供名義の財産を管理や子供が契約する必要がある場合に子供に代わって法律行為を行う権利)
例:
- 子の財産の保守・売買・賃貸・処分権
- 子の訴訟代理権
- 子の相続放棄の代理権
- 子の氏の変更
親権での主張が対立した場合
親権者適格の基準は「子供の利益」です。
① 親権予定者である父母側の状態
- 心身の健康状態
- 経済力
- 今までの生活態度
- 生活予定地の環境
- 監護補助者の存在の有無
- 現在までの子供への親密度
ただし、経済力については、監護権を譲り渡す側に養育費負担の法的義務があるので、必ずしも重要な要素とはなりません。
② 子供の年齢
10歳未満の子
特別な場合を除き、母の下での養育が自然であると一般的には考えられています。
10~14歳
子供の発育状況に応じ、子供の意見を尊重するかどうか検討します。
15歳以上
法律で審判前に必ず子供の意見を聞くことが定められている。
親権適格者は①②を総合的に考え決定されます。
B 親権の変更
親権は「子の利益のために必要がある」と認められた時に家庭裁判所の調停または審判を経て決定されます。ただし、監護権のみの変更は戸籍の記載がないため父母の協議のみでの変更が可能です。
C 合意がなく幼児を引き取ってしまった場合
共同親権に服する幼児を夫婦の一方が引き取った場合、その子の引渡しを求めるためには、「引き取った者が幼児を監護することが子の幸福に反することが明白であること」の証明が必要とされます。
幼児の権利者(監護者)が非権利者(非監護者)に引渡しを請求する場合
人身保護法により引渡し請求が認められる可能性が高い。
D 面接交渉権
監護権を持たない親が、子供と面会・電話・手紙などの方法で接触を持つ権利です。
よく誤解されるのですが、この接触を持つ権利を法律的に「交渉権」と呼んでいますので、監護権を持つ親に対し、監護権を持たない親が「子との面会を交渉(お願い)することができる権利」ではありません。
面接交渉権付与の基準
① 子供の利益・福祉
よって、面接により子供に悪影響があると判断される場合は当然制限されます。
② 親の権利
ただし、支払い能力がありながら養育費を負担しないなど、義務の履行がない場合は面接交渉権が制限されることがあります。