公正証書と強制執行
離婚協議書を作成した場合でも、相手が契約内容を守らずに支払いトラブルなどに発展するケースも考えられます。離婚協議書だけでは法的な強制力がありませんので、法的な強制力を持つ公正証書も離婚協議書と併せて作成されることをお勧めします。
公正証書と離婚協議書の違い
離婚協議書は、当事者で作成や手続きを行うことが出来ますが、法的な強制力が無いため、例えば慰謝料や養育費が約束通りに支払われないなどのトラブルが生じた場合、ことによっては訴訟手続きが必要となってしまいます。
それに対して、公正証書は、法律の専門家である公証人が公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書です。公文書ですから高い証明力があるうえ、裁判抜きに公正証書に基づいて強制執行が可能です。また、公正証書は公証役場でも保管されるため書類紛失のおそれがありません。
公正証書による強制執行
金銭債権に限りますが公正証書に「執行認諾約款」が記載されると、債務者が金銭債務の支払いを怠ると、国が強制的に債務者の財産を処分しその代価によって弁済します。債権者が強制執行の申し立てを行えば、裁判所、執行官が手続きを進めていきます。
特に養育費や慰謝料の分割払いなどの長期間にわたる支払いの場合に有効ですし、また公正証書にしておくことで安心感も得られます。
公正証書作成に必要な書類
(1)離婚協議書
離婚協議書を作成しておけば、その内容をそのまま公正証書にしてくれます。
(2)印鑑証明
発行後6か月以内のもの。(自動車運転免許証、外国人登録証明書、パスポートでも可)
(3)実印
(4)戸籍謄本
(5)不動産の登記簿謄本・物件目録
財産分与の対象になる不動産、動産がある場合には、公正証書の作成が迅速に行われます。(離婚協議書に記載していれば特に必要はありません)
(6)委任状
代理人に公正証書の作成を依頼する場合、契約条項を添付した委任状が必要になりますので、離婚協議書を添付します。
(7)代理人の印鑑証明
代理人に公正証書の作成を依頼する場合に必要です。
公正証書作成の費用
公証役場は、公証人法という法律に基づいて運営されており、全国で請け負う金額など統一されています。
法律行為の目的価格によって、公正証書作成の手数料が変わってきますが、離婚の場合は、慰謝料や養育費の支払い額を取り決めて記載されます。原則として10年分の養育費、慰謝料、財産分与の合計金額が「離婚給付公正証書」の作成基準とされています。
目的の価格 | 手数料 |
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に5000万円までごとに1万3000円を加算 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に5000万円までごとに1万1000円を加算 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に5000万円までごとに8000円を加算 |